特異点
僕の背中のゼンマイは、あと何回まわるのだろう
願われようと、願われなくとも、僕はまわる、すすむ
僕の名前は「停滞」
自分でつけたんだ
誰もくれなかったから
誤解しないでほしいけど、
立ち止まることは必ずしも「停滞」ではない
何も考えずに進むことが「停滞」なんだ
踊り方はとうの昔に、歩き方は遥か昔に、
手の握り方は太古の昔に、
生きる理由は宇宙が始まった時に覚えたよ
だけどそれらは、身体だけが覚えていて
頭では何も覚えてないんだ
誰に教えられたかも
なんとなく、なんとなく思った
あの空が錆びて、月が萎んで、
色という色が乾いた音を立てて粉々になったとき
僕は立ち止まれるって
そうしたら、何かが始まるかもしれないし、
何もかもが終わるかもしれない
そのどちらも、僕の望みだ
「停滞」にとって、終わりも始まりも同じものだから
時間の流れに逆らい泳ぐことを浅ましくも拒み、
流れに身を任せた僕のために、どうか願っておくれ
でも何を願ったかはいちいち知らせなくてもいいよ
君には何も願わない
終わりも始まりも全てを願ってきた僕に、「願わない」を教えてくれた
ありがとう